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2024.10.11
- 人生脚本
人生脚本(life script)⑥/ 人生脚本の形成(児童期)
群馬県伊勢崎市の公認心理師、心理カウンセラーの梶間久美子です。
人生脚本(life script)について、これまでシリーズ⑤まで解説してまいりました。
今回は、人生脚本の形成における児童期について詳しくお話ししたいと思います。
人生脚本シリーズでお話ししてきているように、人生脚本の形成は0歳からスタートしています。
そして、発達段階に応じてそれぞれ欲求(飢え)があります。
各発達段階のその欲求(飢え)が満たされたかどうか、またその満たされ方によって、幼いながら人生脚本の形成を進めていきます。
そうなんです、事実が何なのか分からない時代に、私たちはもう既に死に至るまでのことを
「自分の人生はこう生きよう」「自分の人生はこんなもんだ」と脚本を書いているのです。
・乳児期は刺激の飢え(愛着欲求)
・幼児期は承認の飢え
そして、今回は児童期についてです。
■構造の飢え(時間の構造化)
児童期には【構造の飢え】がでてきます。
構造の飢えとは、時間の構造化です。
自分の時間の使い方のことです。
自分の時間をどう使いたいか、どう過ごしたいかの欲求がでてきます。
心理的にどんなふうに時間を使うかは人生脚本に影響を与えます。
1日の時間の過ごし方が、毎日繰り返されています。
1週間、1年、10年、80年…と。
児童期に欲した「自分の時間はこんなふうに過ごしたい』という欲求が、あなたの生きざまに大きく影響しているわけです。
■時間の構造化とは
小島に流れ着いたロビンソン・クルーソーは、島中を探索したり、小屋を建てたりしました。
このように人は何の意味もなく時間を過ごす事より、何かに時間を使おうとします。
これを【時間の構造化】と言います。
どうやら人間は、何の意味もなく時間を使うのは苦痛になるようです。
なにもせずにはいられない。
だから、そのストレス・苦痛を回避するためにその人なりの意味のある時間の使い方をします。
人生において、自分の時間をどんなふうに使うかを決めているのが児童期になります。
■6つの時間の過ごし方
心理的に人の時間の使い方は6つに分けられます。
私たちは、起きている時間は6つの中でどれかを選んで過ごしています。
私たちは何気なく毎日の時間を過ごしているよう思っているかもしれませんが、実は児童期に決定した通りの過ごし方を選んでいます。
ここで重要なのが「心理的にはどう時間を使っているか」です。
見た目ではなく、その人が心理的にはどう過ごしているかなのです。
そこも含めてここからひとつひとつ調べていきましょう。
1.引きこもり
・自分の中に引きこもっている
・他人と一緒に居ても心理的には離れている
心理学でいうこの『引きこもり』は、必ずしも一人で過ごしているという意味ではありません。
例えば、人と一緒にいても空想して過ごしている時間や、会社にいても上の空の時は『引きこもり』になります。
心理的にはひとりでいる状態です。
人とのストローク(心の栄養)の交換は無い状態になります。
ただ『引きこもり』は人との距離があるので傷つかないという利点があります。
人にとって傷つかないことは安全な時間だといえます。
複雑な人間関係やわずらわしいストロークの交換を回避できます。
幼い頃の家が、自分にとって危険だった方は引きこもりの時間が多いかもしれません。
2.儀式
・無難な挨拶や、昔から伝わる行事など決まったやり方で振る舞う
・生活する上で最低限のストローク交換ができる
例えば、お正月・お盆・入学式・誕生日、お祭り・法事など。
「おはようございます」「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。」など。
無難なやりとりの時間なので、生活する上で最低限のストローク(心の栄養)の交換となります。
3.暇つぶし
・出来事や趣味についてなどの雑談
・お互いに心地良いストローク交換ができる
・「今、ここ」の話ではなく、好きなタレントの話や以前の出来事について自分の興味があることについておしゃべりする
例えば、井戸端会議、SNS、芸能人の話、長電話など。
深入りしない話しの時間と言えます。
4.活動
・生産的な時間、達成感が味わえるもの
例えば、家事、勉強、仕事、具体的な目標のための打ち合わせ、趣味など。
先に時間の構造化は「心理的にどう時間を過ごしているか」です。とお話ししました。
活動の例で、仕事や勉強とお伝えしましたが、心理的にどうかを見ていきます。
仕事や勉強しながら空想していたり、会社の会議中に上の空だったら、その人は心理的な時間の使い方は『引きこもり』です。
好きな趣味のグループに参加しながらも、何か空想して心がひとりでいたら、その人は『引きこもり』の時間になります。
打ち合わせで集まっているけれど、芸能ニュースの話をしていたり、SNSをしていたらその人は活動ではなくて『暇つぶし』の時間になります。
心理的って、見たまんまでは他人が判断できないので面白いと思いませんか。
カウンセリングをしていると、常々感じる・思っているのですが、
本当のところは、ご本人しか正解をもってないのが私は尊いと感じています。
5.ゲーム
・繰り返し行われ長い時間を費やし最後はお互いに嫌な気分で終わる
・非生産的なやり取り
心理学で言う『ゲーム』は、パソコンやスマホなどの機械や物質を用いたゲームとは違います。
長い時間を使って最後はお互いに嫌な気持ちで終わるやり取りを『ゲーム(心理ゲーム)』と言います。
例えば、あなたの友人で「悩んでいるので相談したい。アドバイスがほしい」という人がいます。
あなたは「もちろんいいよ。相談のるよ。私ができるアドバイスはするよ」と会話が始まりました。
あなたは自分なりに考えてアドバイスをします。「○○がいいと思うよ。私には効果があったよ」と。
それに対して友人は「それいいね。でも○○…」と返してきます。
あなたは自分なり考えて友人に良かれと思って別のアドバイスをします。
それに対して「それもあるね。でも○○…」と返事が返ってきました。
更にあなたは、別のものを考えて「そしたら△△はどう?専門家が△△が効果があるって言ってたよ」
それに対して友人は「専門家が言ってたことならいいかもね。それってでも○○…」
「でも」が3回続きましたね。
「でも」が3回以上続くやり取りを『イエスバット(はい、でも)』のゲームと言います。
相談のネタは変わるかもしれないけれど、その友人と会うたび「でも」で返されてるかもしれません。
アドバイスしているあなたは、だんだん無気力になったり、沈黙してしまうかもしれません。
ときには「これだけ言ってあげてるのに!」と怒りを爆発させる羽目になることもあります。
会話のスタートはいい感じだったのに、最後はなんだかお互いに嫌な感じ。
あなたも経験があるんじゃないでしょうか。
「ゲーム」の定義通りで、繰り返し行われ長い時間を使って、最後に味わうのはお互いにスッキリしない嫌な気持ちです。
お互いに最後は嫌な気持ちで終わるやり取りなのに、心理ゲームって親密になりたい人とするんです。
不思議だとおもいませんか。
嫌いだから心理ゲームをするんではなくて、ほんとうは親密になりたい相手とするんです。
パートナーと毎日毎日、心理ゲームで嫌なやりとりしてるのに別れないで何年も何十年と一緒に居る人もいるのは、その一例と言えます。
更に、心理ゲームには裏のメッセージがあります。
『イエスバット(はい、でも)』の裏のメッセージは『あなた(親)の言うことなんか聞くもんか』という子ども時代からの立場を証明したいというのが、このゲームの目的なのです。
もう相手は親ではないのに、私たちは今でも心では相手を親と捉えて心理ゲームをしてます。
もちろん、無意識に誰でも心理ゲームは日常でやっています。
心理ゲームはたくさんあります。各心理ゲームにはそれぞれに裏のメッセージがあるのです。
交流分析では、『イエスバット(はい、でも)』のように、人がする代表的な心理ゲームには名前がついています。
実のところ、心理ゲームは親密さの一歩手前の時間の使い方です。
親密さの代わりに使われます。
心理ゲームは、誰でも日常で行うものなので知識として知ってもらうのは面白いと思います。
また、別の機会を設けて『心理ゲーム』については詳しくは解説したいと思います。
6.親密さ
・信頼に裏打ちされた裏にメッセージがないやりとり
・お互いの感情、考えを共有し最も報酬が大きなストロークが得られる。しかし最も傷つく可能性も高い交流でもある。
親密さは、言葉と腹が同じ関わりです。
裏も表も無い状態。
本音のやりとりです。
本音って怖いもんです。本音をだして相手に拒否されたら最も傷つ可能性がある。
ほんとうは親密になりたい。けれど拒否されるの怖いし、どれだけ傷つくか分からい、
だから親密さの一歩手前の心理ゲームで密度の濃いやりとりをするのです。
最も密度が濃いのは『親密さ』です。
相手に受け取ってもらえたら、ストローク(心の栄養)の報酬は最も大きいです。
「大好きだよ」
「こんなことされるの私は嫌だ」
「私と一緒に居てほしい」
「あなたが居ないと寂しい」
「私と繋がっていてほしい」
「あなたはこれ嫌いなんだ。私はこれ好き」
「私の考えとあなたとの考えは違う」
「あなたの好みと私の好みは違う」
「そんなふうに言われると私は傷つくなぁ」
「私が間違った。ごめんなさい」
「あなたに甘えたい」など。
『親密さ』はハイリスクハイリターンです。
勇気を出して本音を渡してみたら、受け取ってもらえず拒絶・拒否されたら本当に傷つきます。
純粋なものを相手に渡して、そのまま受け取ってもらえたら本当に嬉しい。その時間はまさに『親密な時間』を過ごしています。
裏が無いやりとりは、濃密な時間を過ごせます。
■時間の使い方は人生脚本で決定されている
今回は人生脚本の形成において児童期の時間の構造化の欲求についてでした。
そして、人には心理的に6つの時間の過ごし方があることを解説しました。
ある人は『引きこもり』の時間で過ごすことが多いかもしれません。
ある人は『暇つぶし』の時間で過ごしたいかもしれません。
ある人は生産性のある『活動』で時間を使えると達成感で心地良いかもしれません。
このように、人はそれぞれ時間の構造化が違います。
ちょと小さい頃の自分の時間の使い方を振り返ってみてください。
大人になったあなたは、小さい頃のあなたと時間の使い方がほぼ同じではないでしょうか。
私は学校の時間(お仕事)以外では、空想しながら折り紙やぬり絵をする『引きこもり』で時間の構造化をしていました。
現在57歳の私も、お仕事の時間以外では同じようにあれこれ空想する『引きこもり』の時間が多いです。
これが人生脚本なのです。「自分の人生はこういうふうに過ごして、こんな人生を生きる」と決めているから、幼い頃と同じ人生の過ごし方をしているのです。
そして私は学校で『活動』の時間ももちろんありましたが、授業中も空想して『引きこもり』で過ごすことは多かったと思います。
子どもの頃に学校の時間は、現在のお仕事だと思います。
現在の私は子どもの頃と違い、カウンセリング中(お仕事中)は空想したり上の空で『引きこもり』ではなく、『親密さ』の時間になっています。
私は人生脚本を書き換えているので、児童期に決めた時間の構造化と現在の時間の構造化に違いが出ているのがわかります。
児童期にどうして人により時間の構造化の違いがおこるのか。今後に人生脚本シリーズとして、
人はどのようにして時間を構造化していくのかも解説したいと思います。
■こころの保健室でできること
交流分析の目指すところは『親密さ』です。
こころの保健室で実施しているカウンセリングも、クライアント様が人との関わりで『親密さ』を発揮できるように支援している側面があります。
『親密さ』という能力は誰でも持って生まれています。
幼い頃に傷ついた経験を重ねてしまうと、私たちはこれ以上もう傷つきたくないから
自分を守るために『親密さ』の能力を使わないようにします。
カウンセリングで傷つきを癒していくと、『親密さ』の能力が安全な人に対しては発揮できるようになります。
そうすると人との心地良いやりとりで時間を過ごすことができるようになります。
人間関係のお悩みがだんだん解決されていきます。
そして、こころの保健室では人生脚本の書き換えができます。
10人いたら10通りの人生脚本が存在します。
自分の人生なのに、主役が自分自身とは限らないんです。
自分の人生にもかかわらず、エキストラだったり、主役の引き立て役や
そもそも表舞台に出てきてないという脚本も珍しくありません。
やっぱり自分はダメだ
結局は失敗する
全然できてない
自分がうまくいくはずない
こんな自己否定感の人生脚本であったり
なにか非建設的な人生脚本であったら
いつからでも、何歳からでも遅いということはありません。
あなたが諦めない限り、私は諦めません。
人生脚本を書き換えていきましょう。
それはなにか特別なカウンセリングをするというものではなく
いつものカウンセリングは既に人生脚本に関わるものを自然と扱うことが多いです。
これまで通りに、こころの保健室では【内面から変わるカウンセリング】で根本解決をしていきます。
人生脚本を書き替えたい方、自分自身のことで悩んでいる方、人間関係で悩んでいる方がいらしたらどうぞお気軽にお問い合わせ・お申し込みください。
カウンセリングオフィスこころの保健室
公認心理師 梶間久美子
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梶間久美子は、愛着の無意識レベルのことから、嫌われる怖さ、居場所のなさ、劣等感、自信がないなどの自己に関するお悩みや、様々な人間関係のお悩みなどの根本解決を支援する公認心理師です。
あなたが諦めないかぎり、わたしは諦めない。
あなたをこころの保健室で待機しています。